サブリース事業の立ち退き

サブリース事業の立ち退きのポイント

サブリース事業の立ち退きの場合、賃貸人が、賃借人のサブリース事業を終了させて、賃貸人と転借人(テナント)との直接の賃貸借契約締結を企図する場合などに、立ち退き請求がされる場合があります。

サブリース事業の場合、まず、賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約(マスターリース契約)に借地借家法が適用されるかという問題がありますが、最高裁判所の判例において、サブリース事業におけるマスターリース契約にも借地借家法が適用されるとされています(最高裁判所平成15年10月21日判決)。

また、裁判例上、マスターリース契約において、賃貸人が賃借人に更新拒絶や解約申し入れを行う場合には、通常の場合と同様、借地借家法第28条の「正当事由」が必要であるとされています。
「正当事由」の判断においては、サブリース事業であることは、賃貸人や賃借人の建物使用の必要性を判断する一要素として考慮されますが、サブリース事業のための契約であることそれ自体が「正当事由」を基礎づける独立の要素にはならないとされています。

そのため、賃貸人がサブリース事業を終了させるためには、自己使用や老朽化による建て替えなど、建物使用の必要性を基礎づける事情が必要であり、こうした必要性がない場合には、正当事由は否定される傾向にあります。

サブリース事業の立ち退きに関する裁判例

サブリース事業の立ち退きについて賃貸人の立ち退き請求を否定した裁判例

<札幌地方裁判所平成21年4月22日判決>

基本情報

  • 物件所在地:北海道札幌市
  • 用途:サブリース事業
  • 賃貸人が立ち退きを求めた理由:契約期間の満了、賃借人による管理業務の懈怠等
  • 賃料等:609万2005円

裁判所の判断-借地借家法第28条の適用の有無

⇒本件契約は、賃貸人が賃借人に対して本件建物賃貸部分を使用収益させ、対価として賃料を支払うというものであり、契約の性質は、建物の賃貸借契約と認められる。
⇒本件契約には借地借家法が適用され、同法28条も適用される。
⇒借地借家法では、建物の賃貸借が居住目的であると事業目的であるとを問わず適用されるものであり、賃貸人又は賃借人の属性(商人、大企業、社会的弱者等)によって適用に相違があるものではないので、賃借人において、テナントに転貸して収益をあげることを目的とするサブリース契約であることによって、借地借家法第28条の適用が否定されることにはならない。

裁判所の判断-正当事由の有無

本件契約の更新拒絶について借地借家法第28条の「正当の事由」が認められるか否かを判断するにあたっては、同条に規定されている「建物の賃貸人及び賃借人(転借人も含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経緯、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明け渡しと引換に建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出」などの事情を考慮して判断することになる。
⇒本件契約がサブリースであることが、上記の「建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情」の一要素として考慮されることはあっても、サブリース契約であること自体が、同法28条の「正当の事由」を認める方向での独立の考慮要素となるものではない。

・賃貸人が、本件建物賃貸部分の使用を必要とする理由は、本件建物賃貸部分を直接テナントに賃貸することによって、本件契約の賃料以上の収益を上げようとすることにある。
賃借人は、本件契約の契約期間中、自らの企業努力によってテナントを確保し、本件建物賃貸部分の転貸を企業の主要な収入源としているのである。
⇒本件建物賃貸部分の使用についての賃貸人と賃借人の必要性の比較の観点からは、直ちに、同法28条の「正当の事由」を認めることにはならないというべきである。

・本件契約のようなサブリース契約は、賃貸人にリスクのない安定した賃料収入を保証する一方、賃借人であるサブリース業者に、空き室発生や賃料滞納等のリスクを負わせる反面、企業努力等によって転貸借契約の履行状況が良好な場合に、相応の利益をもたらすことを前提とする契約形態である。
⇒たとえ、賃借人が、本件契約によって賃貸人に支払う賃料を遙かに上回る収益をテナントから得ているとしても、そのことはサブリース契約という契約形態において想定されている範囲内の事柄である。
⇒したがって、そのことが、賃貸人による賃料増額請求の事由の1つとなることはあっても、賃借人からその収益を得る権利を奪ってしまう結果となる、更新拒絶の「正当の事由」が認められる事由になるということはできない。

⇒賃貸人の主張する正当理由を否定し、立ち退き請求を棄却。

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